先日、Panicポッドキャストの第6回を公開しました。 これは私たちが年末に出荷を予定している携帯ゲーム機Playdateの誕生から開発の過程を、9時間以上に及ぶ関係者へのインタビューを元に編集し、紹介したものです。しかしすべての人がポッドキャストを聴く訳ではないですし、広く知っていただきたいため、全文を書き起こしてブログ記事にすることにしました。
聴くのも読むのもあなた次第。どうぞお楽しみください!
ちょうど10年前、Teenage Engineering社のヘッドデザイナーにして同社CEOのJesper Kouthoofdは、1通のメールを受信しました:
Hi Jesper,
We’re a small software company that makes Mac/iOS apps. For our 15th anniversary, I’ve been tinkering with an idea: find our 150 best customers, manufacture something incredibly special, and send it to them.(ジャスパー、私たちは小さなMac/iOSアプリ開発会社です。創業15周年を記念して、あるアイディアがあります: 150人の特別なお客様に向け、何かとびきりスペシャルなものを作り贈る、というものです。)
アプリ開発会社の創業15周年を祝うための思いつきが、紆余曲折ありバトルあり、携帯ゲーム機を誕生させるまでの10年におよぶサーガにつながったのです。
私たちの物語は正確には言えませんが、2011年ごろから始まります。
「あまりにも長く関わっているので、どのように始まったのかをハッキリ思い出せません。」と、Panicの共同創業者であるSteven Frankは語ります。
ある時、もうひとりの共同創業者Cabel Sasserとの間で、翌年に迫った15周年記念についての話になりました。Panicは1997年創業のMac用アプリ開発会社で、記念する何かを作りたいと考えていました。ソフトウエアで無く、何か物理的なものを。
「何か思い出になるようなものや、突然産み落とされた様なスペシャルなものを作りたかったんです。それも、これまでに自分たちがやったことのないことで、が目標でした。私たちは今しているこれらの専門家ではありません。成長の余地は常にあります。全く未知のことに挑戦し、そこから何が学べるのか。だからこそアプリ開発会社である私たちは敢えて、ハードウエアを作ることしたのです。」とCabelは言います。
ハードウエアを作るとして、それでは15周年に間に合わないだろうと考えました。そこで新たな照準を20周年に合わせることにしました。
「20年というのは、同じことをし続けるには長い時間です。もちろん私たちは自分たちの仕事を楽しんでいますし、そうでなければ20年もやっていないでしょう。しかしPanicがPanicである理由のひとつは、また、会社を売却したり投資を受けたりしない理由のひとつは、普通じゃない奇妙なことをできる自由を、自分たちで本当に評価しているからだと考えています。冒険や奇妙なサイドプロジェクトを誰にも縛られず、多くの意味を持たせたりすべてを正当化したりすること無く、完全に自由な創造性を発揮することができるのです。やりたいことは何でもできるのです。Panicを長く続けるにつれ、それが本当にユニークで稀なことだと理解し始めたように思います。それは本当に特別なことです。」と、Cabel。
Panicの20年を記念するには、斬新なハードウエアはピッタリだと思います。実際、この10年後にはスピーカードックとSDK、様々なインディー開発者による24本の驚くべきタイトルを備えた、風変わりな携帯ゲーム機が出荷されようとしています。しかし初期のアイディアは、ゲームとは全く関係が無かったようです。
Cabelは続けます。「色々なことを話し合いました。最初のアイディアのひとつは時計だったと思います。クールな時計です。磁器でできていてチャイムか何か鳴るとか、とにかく時計のためのユニークなアイディアが沢山ありました。」
「それはそれとして、ディスプレイを調べているうちにこのシャープ製のメモリ液晶ディスプレイに出会いました。実際、このディスプレイから携帯ゲーム機のアイディアに行き着いたのか、それとも逆だったのか、今となっては思い出せません。」
Stevenはディスプレイから始まったと考えています。
「私の記憶だと、Cabelがメモリ液晶ディスプレイと呼ばれるものを見つけてきました。電子ペーパーの様に高反射で。だけどディスプレイなんです。」
「電子ペーパーは画面が更新するたび大きなリフレッシュレートが発生しますが、このディスプレイでは起こりません。にも関わらず、ゲーム&ウオッチのような昔のLCDゲームの雰囲気もあります。」とCabelは言います。
ゲーム&ウオッチは1980年代に任天堂が製造・販売していた携帯ゲーム機です。1つのゲームが楽しめ、デジタル時計機能もありました。別のタイトルで遊ぶためには、それが含まれるゲーム&ウオッチを買う必要がありました。
「あれはセグメント液晶ディスプレイでした。」Cabelが続けます。「事前にアートワークを定義し、様々なアートワークをオン・オフしてゲームが構成されます。画面の解像度は非常に高いです。ごくごく初期のアイディアとして、ゲーム&ウオッチをプレイするためのデバイスを作る、というものがありました。」
Playdateのプロジェクトマネージャー、Greg Maleticが続けます。「…ある時、誰かが悪いアイディアを思いつきました。このデバイスを持っていると、1週間後に…」
「…ゲームが切り替わる!」Cabelが続けます。「ある日『ボール』をプレイしていると次の週、突然画面が切り替わり、別のゲームが始まります。標準的なセグメント化されたLCDゲームやゲーム&ウオッチのゲームが1週間後、別のゲームに入れ替わるとしたら、人々が驚くんじゃ無いだろうか?と。」
「アイディアは時間の経過と共に変化し、成長していきました。私たちはゲームが大好きです。何かハードウエアを作りたい。他の何かと似ていない、特別なものにしたい。人々が混乱するほどに驚き、同時にハッピーな気分になってもらえるものにしたい。これらを重ねてギュッと詰め込みました。」
創業15周年記念時計のアイディアは、20周年記念ゲーム&ウオッチ的なゲーム機に発展していきました。さて、実際にこれを作るためにはどうしたら良いのでしょう?何から始めたら良いのでしょうか?
Cabelによると、「それはプロジェクトの初期段階、あれは重要な瞬間でした。」
「ワンオフ品のデザインを、業者に依頼してはどうでしょう?」会議に参加していたデザイナーのNeven Mrganは言いました。
「あれは地元の、デザインファームのような大きな会社でした。」Cabelが付け加えます。「彼らは巨大な店舗や内装、製品などあらゆるものをデザインしていました。その出会いは実に興味深いものでした。」
Nevenがそっけなく言います。
「彼らは私たちに言いました。『何について話しているのさっぱり分からない。絶対に完成しないでしょう。』」
「その会社の社長も同席してくれて、親切な人でした。」Cabelが言います。「彼らは私たちがスマートウォッチを開発したいと思っていたようで、エンジニアやコンサルタントを何人か、引き連れて来てくれました。私たちはそうじゃない、とゲーム機のアイディアを説明しました。変化するゲーム機なんだ、とすべてを伝えました。が、彼らはそれをするべきじゃないと、会議中のほとんどで言っていました。法外な製品価格になる、プロトタイプの作成以前に500万ドル、巨大なチームが必要等々。会議の途中で誰かが言っていました『なぜこんなものを?誰が欲しがるんだ?』と。とても意気消沈しました。この時ばかりはスティーブ・ジョブズの様に会議の途中で席を立ちたいと思いました。私はスティーブでは無いので実際にはしませんでしたが、残酷な時間でした。今では彼らが何を言いたいのか、理解できるようになりました。私たちのやっていることは間違い無くクレイジーです。『アプリのアイディアがあるんだけど!』と言われたら『ああ、それは良いアイディアだけど、考えなければならないことがたくさんあるよ。難しいし、成功する可能性も低い。』と言うでしょう。私たちは同じように『ちょっと、ハードウエアのアイディアがあるんだけど』と言っている人たちで、彼らは『うーん、色々と理解しておいて欲しいことが…』と伝えてくれていたのです。しかし彼らが我々について理解していないこととして、我々は学ぼうとしています。例えそれが失敗に終わっても、私たちがこのプロセスから得ようとしているのは何か新しいことをして、何かを学ぼうとしているということなのです。という訳で、あの会議は最悪の結果に終わりました。完全な失敗、大惨事と言っても過言ではありません。」
会議は失敗に終わりましたが、Nevenはこの会議をきっかけに、Cabelがこのプロジェクトをやり遂げようという気持ちをさらに強くしたと考えています。直後、CabelはTeenage Engineeringに連絡を取りました。
CabelはTeenage Engineeringの工業デザイン、特にシンセサイザー: OP-1のデザインに感銘を受けていました。
「こんなゲームシステムで、こんなクレイジーなアイディアがあるんだ… という感じで、何度かメールのやり取りをしたんです。彼らの最初の返事は、『それは素晴らしいです。私たちもそのためのゲーム開発ができますか?』でした。私は『Oh, God!』と思いました。とっても良い気分でした。彼らはそれらを理解してくれる人たちなんだと思いました。」
すぐにCabelとJasperは直接やりとりする様になりました。
「ディズニーランドで一杯やったのを覚えています。」Jasperは言います。「その後MoogfestのためにAshevilleに行き、チームに会ってPlaydateの最初のプロトタイプのようなものを見せてもらいました。ただの回路基盤でした。」
「基盤の初期プロトタイプは本当にたったひとりが開発していました。電子機器の知識を持っているのはDaveだけでした。」Stevenが言います。
「Daveはディスプレイをプリント基盤に貼り付け、オペレーティングシステムを動作させ、ゲームを起動させたのです。これには今でも驚かされます。」Gregが続けます。「どうやってるのか、全く分かりません。」
「すべての始まりはPanicがAshevilleで見せてくれた回路基盤で、もう少し小さくても良いんじゃ無いかと感じていました。」Jasperは言います。「今の1.5倍くらいの大きさだったと思います。高さもあって最初のゲームボーイみたいでした。私たちはみんな任天堂と一緒に育ちました。特に私にとってはゲーム&ウオッチシリーズが最も刺激的な思い出です。ゲーム&ウオッチが発売されたとき私は小学校4年生か5年生だったと思います。小さなゲーム機に描かれている小さなイラストの様に、すべてのスタイルやディテールが時間をかけて作られていることに圧倒されました。」
Panicはゲーム&ウオッチにインスパイアされたこのデバイスのコードネームを「Asheville」と決めました。これはシンセサイザーのパイオニアであるRobert Moogに敬意を表して名付けられたエレクトロニック・ミュージックとテクノロジーのフェスMoogfestで、Jasperに初めてプロトタイプを見せたノースカロライナ州アッシュビルでの出会いに敬意を表したものです。
Ashevilleのオリジナルコンセプトは、ゲーム&ウオッチスタイルのゲームを忠実に再現したデバイスでした。セグメント液晶のためにデザインされたゲームですが、Nevenは次の様に説明します。「昔のデジタル時計の様に、形があってその一部をオンにしたりオフにしたりして表現します。画面全体にピクセルがある訳ではありません。私たちのディスプレイはそうではありませんが、もしかしたらその様に見えるかも知れないと思い、しばらくそのアイディアで遊んでいました。」
しかしゲーム&ウオッチの思い出は、少々美化されていたかも知れません。
「月曜日にオフィスで、『問題がある。ゲーム&ウオッチのゲームは、あまり面白くない。』と言ったのを覚えています。」Cabelは言います。「それは本当のことです。ゲーム&ウオッチのゲームは美しく素晴らしいのですが、1時間くらい、もしくは30分くらいかも知れません。1982年の時点では間違い無く素晴らしいものでしたが、長時間プレイし続けてもあまり面白くありませんでした。『ああ、本物のゲームでなければならない。』と、ある種の制限を完全に取り払ったのがこの時です。私たちは明らかに範囲を限定し、慎重に考えていました。シンプルなゲーム&ウオッチみたいなゲームを作れば良いんだ。まずは時計を作るところから始めよう、と。そして、『そうだ、本物のゲームをプレイできる、本物のシステムにしよう!』と決めた後は、様々なロックが解除された様な感覚がありました。」
「その結果、巨大な箱が開かれました。ゲームをどのようにして取り込むのか?どうすればゲームをサポートできるプラットフォームを作れるのか?」Gregは言います。「その瞬間から、非常に困難なプロジェクトは、とてつもなく困難なプロジェクトになりました。」
難しいチャレンジです。しかし新しい友人であるTeenage Engineeringの力を借り、現実のものにしようとしました。
「彼らはこのチャレンジをとても気に入ってくれました。」Nevenが言います。「例えば十字キーやボタンが必要だとか、回転して入力できるクランクがあったらどうか、また背面や側面にタッチ入力できたらどうだろうか、ピンボールの様なバネ入力はどうか等々、たくさんのアイディアを送ってくれました。そのどれもがクールでした。」
他にも、裏返してゲームの一部の表現として利用できる丸いディスプレイの搭載や、さまざまなコントローラーが提案されました。
「私のデザインプロセスは、とにかくたくさんのアイディアから始めます。」と、Jasperは言います。「なのでさまざまなフォームファクター、異なるプロポーション、色、ボタンレイアウトを3Dプリントしました。私たちはとてもシンプルなデザインにしたいと強く考えていましたが、ちょっとしたアイデンティティを加えたいとも考えていました。ゲーム業界における車輪の再発明?非常に効果的ですが、私がものをデザインするとき、本当にそれをユニークなものにする、少なくとも1つを追加するのが好きです。」
「Teenage EngineeringのデザイナーであるJasperは、今日の私たちの『タッチスクリーン依存症』から解放したかったと言っていました。」とNeven。
「私たちの行っていることは、『タッチスクリーン依存症』の代替手段を作り出すことかも知れません。タッチデバイスは便利ですが、正直、使用感に満足している訳ではありません。何百ものボタンやノブなどを持たず、さまざまなアプリを作るための素晴らしいインタフェースだと思っています。スマートフォンなどでは非常に有効ですが、ゲーム機でも有効でしょうか…?私にとってゲーム機は楽器と同じようなものです。ゼロ・レイテンシー、筋肉による記憶、起こるすべてをすぐにコントロールできるという感覚が必要なのです。そのためにはボタンを押したり、クランクを回したりとどんな方法でも良いのですが、全体的な体験やコントロールする喜びを得るには、触覚がとても重要なのです。」
「最終的に、この製品に何が必要で何を省くかを決める時が来ました。そして私たちはクランクのアイディアに強い反応を示しました。クランク、十字キー、ふたつのボタンと電源やメニューなどのためのボタンを追加し、そこに落ち着きました。」
ついにAsheville、今日では「Playdate」と呼ばれるコントラストの高い白黒スクリーンとクランクを備えた、楽しい携帯ゲーム機が決定されました。
「次のステップはデバイス全体をエンジニアリングすることで、すべてのアイディアを取り入れ、それをどのように実装するかを考えることです。クランクを折り畳んで収納できるよう解決できたのはとても嬉しいです。必要のない時はそこに無いようにできる。この実装を私はとても気に入っています。」と、Jasperは言います。
工業デザイン、つまりPlaydateの全体的なフォルムがほぼ固まったところで—2ステップでフクロウを描くミーム—の様なことを考えました。まず異なる2つの円を描きます。続いて、フクロウの残りの部分を描きます。Panicはいい感じの円を描きました。さていよいよ、フクロウの残りの部分を描くことになりました。ですが困ったことに、Panicはまだソフトウエアの会社でした。
「ご存知の通りハードウエアの完璧なチームはありません。」Stevenが続けます。「私たちにはただ、Daveがいます。」
「Dave Haydenはハードウエアについて知識があったので、私たちを最初に動かし始めてくれました。」Gregが加えます。
「だいぶ前のことですが、最初の数年間は私だけでプロジェクトを進めていました。私はDave Haydenです。エンジニアです。今はこのプロジェクトを通じ、本物のエンジニアと言えると思います。以前はプログラマーと自身を呼んでいました。最初の2年は自由に学び自由に遊び、自分自身を教育していました。その後はもちろん、結果を出さなければならなくなりました。」
彼はそれをやってのけました!程無くして、電気工学コンサルタントのStefan Burstromが加わりました。スカイダイビングの合間に、Playdateの電子的エンジニアリングを手伝ってくれています。
「彼は私が試作した回路図に肉付けし、私の知らなかった電源関係をすべて把握してPCB(プリント基盤)のレイアウトを行ってくれました。」Daveは言います。「私たちが大失敗だったのは、わずか数ヶ月で実用的な試作品ができてしまったことで、『これは楽勝だ!』と思ってしまったことです。」
「ハードウエア開発は本当にハードです。だからそう呼ばれてるんでしょう。」Stevenがジョークを飛ばします。
「ハードウエアで起こる問題は、どれも物理的な問題です。」Cabelが言います。「ちょっとデバッガを開いてみよう、とはならないのです。ソフトウエアの場合は再現可能なテストケースがあれば、バグを修正することができます。再現性があればそれで良いんです。でもハードウエアではひとつのユニットで再現できても、他のユニットでは起こらないかも知れません。」
Stevenも同感です。「20年間ソフトウエアの仕事をしてきましたが、何か問題が起きればパッチをいつでも当てることができます。『このファイルを削除したり、この様に変更したりすれば、ご自身で解決できますよ。』と伝えることもできます。ですがハードウエアはハードウエアです。工場で作られたものが人の手にわたり、もはや自分ではどうすることもできません。それが怖いのです。私たちにとってそれは初めての経験で、懸命に努力しています。」
「これまでに起きた問題は、問題になるとは全く想像していなかったものばかりで、本当に驚かされます。」とCabelは言います。「経験によってもたらされたものが沢山あります。もしチームにハードウエアの専門家がいたら『おいおい、XとYと、あとZに気をつけろよ。』と言ってくれたかも知れません。ですが、私が予想もしなかった多くのうまくいかないことがありました。クロックチップについて考えたり、十字キーやボタンの感触を良くするためにどれだけの努力や作業をしたか、とか。Todoリストで言えば、項目1『十字キーの感触を良くする』。これだけですが、実際にこれを実現するにはどうしたら良いでしょう?答えは無数にありますし、ケースの厚さやフレックスボードがケース内でどの様に配置されているのか?という付随する質問も現れます。加えて、自動だと思っていたほんの些細なことが、実は全然自動では無かったということもあります。ソフトウエア開発でも同じケースがありますが、ソフトウエアより遥かに深刻です。例えば、ユーザをサーバにログインさせるためのボタンが必要だとします。それを実現する方法は山ほどありますが、繰り返し試すのはソフトウエアでは簡単です。Photoshopを開いて30分もあれば50以上のアプローチを準備して試すことができます。これがハードウエアとなると実際に作ったり、3Dプリントしたり、レーザーカットしたりすることが必要になります。完全に別世界です。ですが非常にやりがいがあります。手で持てる、触れられる、感じられる物理的なものは、ダウンロードして手に入る抽象的なものとは異なります。挑戦に勝つこともあれば負けることもありますが、とにかく大変なことの連続です。」
「実際にハードウエアを作ることがどれほど大変か、ある程度予想はしていましたが、細かなディテールにまで及ぶとは想像もしていませんでした。」とStevenは認めます。
別のStevenは「ハードウエアは難しい。ですが不可能では無い。」と言います。Steven Nersesianは妻のJessica Nersesianと共に製造コンサルティング会社Metric Designworksを通じ、2016年からPlaydateに取り組んでいます。
Greg Maleticによると、Steven NersesianとはTeenage Engineeringの紹介だったそうです。
「彼はPlaydateを構築するための複雑なプロセスのナビゲーターとして推薦されました。これまでコンサルタントとして様々な会社で何度も経験を積んできた人物です。私たちにとって非常に貴重な存在です。彼はマレーシアのS&Oという製造会社を見つけてくれました。過去に多くのプロジェクトを一緒に行ってきた実績があり、Playdateのための部品の調達方法やカスタムパーツの設計方法も教えてくれました。彼はPlaydateの工学エンジニアリングの多くを担当しています。彼の存在無くしてPlaydateは存在しなかったと言っても過言ではありません。」
「私はハードウエア製品を作るために必要なすべての異なる分野で、総合的な調整役です。メカニカルデザインにおいても貢献しました。妻のJessicaは品質管理の面で貢献しています。私は電子技師、ファームウエアデザイナー、製造会社、Panicの幹部と協力し、仕様を改良しています。」と「Steven N」は言います。以降Steven Frankと区別するため、親しみを込めてファーストネームで呼んでいきます。
「私は過去にTeenage Engineeringと幅広く協力してきました 。工業デザインと初期の機械工学の概念が完成したらMetricにパスし、フィニッシュに到達できるようアドバイスしました。私たちはそれに集中でき、実際にPanicと共に体験し、ガイドできたと思います。」
それは複雑なプロセスでした。Playdateのハードウエアとソフトウエアは連携して開発され、それぞれが他方の開発に依存しています。
「このプロジェクトの最も困難な部分は、物理的な部分のみならず、内部もカスタムであったことでした。」とSteven Nは言います。「つまり、ソフトウエア、オペレーティングシステム、ファームウエアといった、物理的な製品をゲーム機たらしめるすべてのものです。ハードウエアのカスタマイズにソフトウエアがその都度追いつく必要があったため、望むほど速く開発を進めることができませんでした。そしてソフトウエアを入手してロードし、課題を見つけたら物理的、電気的に検証していく必要がありました。並行して作業を進めていましたが、ある時点で一緒にテストをすると変更しなければならない箇所が出てきました。ひとつのことが他方に影響を与え、プロセスが長くなりました。私たちはそれを受け入れるしか無かったのです。」
Playdateはハードウエアのプロジェクトとして注目されていますが、ソフトウエアやファームウエアコンポーネントも沢山あり、デバイスだけで無く、互いに連携しなければなりません。
トップレベルにあるのは、開発者がPlaydate上で動作するように製作されたゲームです。そしてゲームの実行と、デバイス全体を管理するオペレーティングシステムがあり、その下に様々なハードウエアコンポーネントと直接連携するファームウエアがあります。さらにデバイス上のソフトウエアとファームウエアに隣接して、ゲーム開発者がコードを書くために使用するソフトウエア開発キット(SDK)と、ゲーム開発者がコードを実行、テスト、デバッグするためのMacおよびPC/Linux用のエミュレータがあります。さらにPlaydateの組み立てラインでは、生産用のソフトウエアがあり、生産の各段階での診断テスト用デバイスがあります。
James Mooreは組み立てラインで動作するソフトウエア構築を担当するエンジニアです。
「James MooreはすべてのPlaydateが規定通りに動作しているかを確認するためのQAに取り組み、素晴らしい仕事をしてくれました。」とGregは言います。「これまでハードウエアのQAを行ったことがなかったので、これは大きな学習でした。PanicではソフトウエアのQAを担当しており良く知っていますが、それをハードウエア上で行うのは全く違う命題です。Playdateの様々な側面をテストするため、様々なステーションを設置しています。Jamesはそのソフトウエアをゼロから構築するという素晴らしい仕事をしてくれました。」
「工業機械のソフトウエアはかなり変わっています。というのも多くのテスト機器と接続する必要があり、それらはすべてシリアルポートを介しテキストベースのプロトコルが使われています。90年代に学んだ知識を蘇らせて工業用ロボットと会話したり、テキストベースのメッセージを処理したりすることはとても楽しかったです。JSONを使ったサーバ・クライアント通信など、今日とは全く違うものです。これらのテスト機器はそれぞれが独自の方法で何を見ているのか、どんな値が知りたいのかを教えてくれます。すべてがRaspberry Pi上で動作しているため、処理能力に制約があります。私たちのテストの中には高い処理能力を必要とするものがありますが、このようなデバイスを組み立てるラインでの作業は、今まで見たこともないマーフィーの法則の実践が必要とされます。うまくいかないことは絶対にうまくいきません。初めてマレーシアに行った時、バグを潰しては次のバグを潰す、ということを何日も続けて行ったことがありました。オフィスではうまく行っていても、実際の現場では様々な問題が発生します。組み立てラインは生き物で、オフィスでは再現できません。」
Dakota Wardも電気工学と組み立てライン用のソフトウエア開発を行ったひとりです。
「私が学んだのは、1台1台本当に小さなバラつきがある、ということです。それを考慮しないでソフトウエアを開発すると失敗します。ポートランドのオフィスでソフトウエアを書くのと、マレーシアで300台のユニットに適用するのとでは全く別の話で、大抵どこかで必ずエラーとなり、それに対応しなければなりませんでした。それが理解できたのは実際に現地に行き、プロセスや作業員の行動を見たことが大きかったです。」と、Dakotaは言います。
「たとえ同じテスト用の治具があったとしても、10人が同時に別々の場所で作業することはできません。」と、James。「私がテストコードのバグを修正しようとしている時、時を同じくしてDaveはファームウエアに変更を加えているかも知れません。それは私に見えている問題のための対処かも知れませんが、私も作業してしまっています。その結果意図しない結果が生じ、組み立てラインの他の場所で新たな障害が発生する可能性があります。」
Daveはそれを淡々と受け止めます。「そう、まさにMarcの今の課題です。」
2019年、Marc JessomeはPlaydateのファームウエア開発のためチームに加わりました。
「Marcはシニアファームウェアエンジニアのひとりで、Pebbleという腕時計と、Fitbitの開発に関わった後、私たちのチームに加わりました。彼はハードウエア製品を実際に出荷したことがあります。私たちはそうではありません。彼はすぐに私たちのやるべきことを理解し、WiFiの高速化や消費電力の削減、ダウンロード処理の高速化などに取り組んでくれました。製品に必要な信頼性や速度の向上に関わる、本当に必要な部分で、彼の働きは非常に大きな助けになっています。」とGregは語ります。
Marcは言います。「私たちは小さなチームであり、その事実を楽しんでいます。つまり、ファームウエアのすべての部分で作業できるということを意味します。修正が必要な箇所があれば、それは単に自身で調べて対処すればいいのです。私がチームに加わってすぐ、オースティンに招待され1週間かけてDaveと親交を深めました。そして現地で作業を行いました。この1週間で物事がどのように機能するかを深く理解できましたし、計画ややりたいことを話し合いました。とても貴重な時間でしたし、Daveと一緒に過ごせて良かったです。」
そうでしょう!Daveは美味しいバーベキューの店を知り尽くしています。
「そう、彼は私を素晴らしい場所に連れて行ってくれました。お店の名前は思い出せませんが、ハイウェイの脇にある小さなトレーラーのようなところで、最高のテキサスバーベキューでした。噂通りの味でしたよ。」
バーベキューが気になりますが、話をファームウエアに戻します。
「ファームウェアの開発はソフトウエアとハードウエアの融合です。」Marcが説明してくれます。「私が担当しているのはデバイス上でゲームを動作させるためのオペレーティングシステムであり、ゲームがハードウエア自体と相互作用するためのものです。例えばPlaydateにはユーザが操作できるボタンがあり、それが押されたことをゲームは知る必要があります。ハードウエアとのインタラクションを、デバイス上で動作するソフトウエアが利用できるようにするのです。」
「私たちはすべてゼロから自身で開発しているので、どのように機能しているかを正確に知っています。最近のデスクトップOSは物事が機能し無くても、その原因ははっきり分かりません。運を天に任せているようなものです。」とDaveは言います。「最終的に何が問題なのかを解明できる、ということを私たちが分かっているのは良いことでもあり悪いことでもあると思います。最下層のレベルではスタックの最下層でコードを書けるんです。それは本当に楽しく、物事の根幹に深く入り込めます。」
Marcが続けます。「信頼性の高いファームウエアのアップデートは、このデバイスにとってかなり大きな課題でした。そのためにはすべてのものが調和し、動作する必要があります。WiFi、アップデートを提供するウェブサービス、デバイス上のストレージなどです。そしてアップデートを成功させデバイスを故障させないために、すべてのコンポーネントが適切に配置されている必要があります。私たちは何百、何千のデバイスを壊してしまうような悪いファームウェアを共有したくありません。人々が楽しい時間を過ごせるようにすると同時に、せっかくの素晴らしいデバイスが文鎮化してしまうようなことが無いようにしたいのです。これはストレス的な面でも、技術的な面でも、楽しさの面でもチャレンジです。」
「かなり、スリリングです。」とDave。「奇妙な夢を見ていたと思ったら、地球の反対側にある工場でそれが実現しているんですからね。」
「これは反復的なプロセスです。」Steven Nが言います。「最初のプロトタイプができました。OK、コンセプトが証明でき、これならできそうだ、と。続けて再び大まかに形作り、みんなで触って、座って、今の状態が気に入ったか批判する箇所があるかを評価して、それから次のステップに進むんです。Playdateプロジェクトでは、全員が満足できるものに仕上げるため、何度も何度も繰り返し評価してきました。」
時にはもどかしいプロセスでもありました。評価を繰り返すたび、新たな解決すべき問題が噴き出してくるようでした。Gregは2018年10月に工場を訪れた際、少しやる気を失ったことを覚えています。
「現地に着いて、テストモデルの様な形で製造されたユニットを目にした時、そもそも見た目がどちらも悪くてボタンも効かず、最悪でした。それまでとても良かったはずなのに、どうしてこんなことになってしまっているんだろう?と、9ヶ月ほど後退したように感じました。とはいえ問題に取り組み、何が問題なのかを考え始め、すべての問題を炙り出し解決しました。その絶望の淵に立たされた時、私はあることに気付いたんです。問題はプロセスの一部でありそれを受け入れ、それに従って対処していけば良いと。ハードウエアは厄介なものですから。」
バグや問題が発生する悪夢のようなシナリオを避けるため、抽出した数台でテストするのでは無く、ゆっくりと着実に反復しながら生産する方法を選びました。
「一気に何千台と生産し、すべてを修正しなければならない様なことは避けたいです。」とSteven N。「ですから非常に慎重に規律正しく、10台生産したらその10台をチェックします。問題があればその問題を、10台完璧に生産できるようになるまで修正し続けます。これを繰り返しています。」
「で、10台目にまた別の問題が発生するんです。」と、ハードウエアQAを担当するJessica Nersesianが言います。
「程無くして、その数を25に増やし、それを数週間続けました。」とSteven Nは続けます。「それぞれの段階で現場にいることは、とても貴重でした。その場で確認し、承認し、助言できました。今度は50台にしてみようとなり、規模が大きくなるにつれプロセスも改善され続けました。正しいことをしているという自信が生まれました。」
「リモートでできることではありません。」Jessicaは言います。「何かの写真が送られてきて、これでOKですか?と言われても、写真を見ただけでは分かりません。私が現場にいて、実際に検査する必要があります。そうすることで、私たちが求めるレベルの品質に校正して、工場側に伝えることができます。」
Jessicaは品質管理を中心とした幅広い仕事を担当しています。「ベンダーから送られてくるものを取り次ぎ、各オペレーターがPanicの期待する基準に合わせて校正できるようサポートし、QAプロセスを開発して工場の品質管理担当者をトレーニングしています。また必要に応じてラインの設定も手伝っています。またサステナビリティに焦点を当て、プロジェクトが使用済みとなった後についても研究しています。実は私、元々はキッチンの担当で千人分の食事を作る巨大なラインのセッティングをしていました。工場のラインの立ち上げととてもよく似ています。どちらの場合も部品を受け取り、全員が同じレベルの理解と集中力を持っていなければならないのです。」
「Playdateを構成するすべてのパーツがカスタムメイドなんです。」と、Steven N。
「ですから、ネジのような簡単な部品でもウェブサイトから『このネジを頂戴』とはならないのです。すべてゼロから作られているのです。」
「ネジは、ネジの頭の部分を市販品よりも薄くしたり、ディスプレイに干渉しないよう、長さも短くしたりしました。本当にすべてのコンポーネントがカスタムベースで作られているのです。」
Jessicaが続けます。「部品を受け取ると、私たちはその品質をチェックします。パスした部品のみが、ラインに流れます。これはとても難しいパズルで、しかも15人の仲間で組み立てています。各人が小さな部品を作り、次の人にパスします。自分の求められている品質が完全に理解できていない人がいると、悪い部品がパスされてしまいます。そうなるとラインの最後の最後で品質管理をパスできず、ユニットを破棄しなければならなくなり、これは避けたいです。そのため、ファームウエアと目視の両方で複数回のチェックを行なっています。品質管理では単に動くかどうかだけで無く、耐久性もチェックされます。本体のギャップをエッジに沿って、ミリ単位で測定します。ドット欠けや傷の有無をチェックします。製造を繰り返していくと、クランクの弛みや以前は無かったディスプレイの隙間など新たな問題が出てきます。その度にグループで協力し、新たな問題を解決する方法を模索しています。」
「15のステーションがあり、テンプレートや治具が用意され、適切かどうか位置合わせができるようになっています。」とSteven N。「まず最初にディスプレイの液晶が点灯するかを確認します。次はそのディスプレイをフロントハウジングに接着します。何が問題で何が問題で無いのかを理解する、これが各ステーションの担当者の別の仕事になります。その日によって複数の人が各ステーションを担当します。ですので人々をトレーニングし、私たちが求めるものを感じ取ってもらうのです。そして、どうすれば可能な限りミスを無くせるのか?」
その答えは少しずつ、見つけられ始めています。
マレーシアのS&O社で生産ラインの調整や品質管理テストが行われている間、Panicはポートランドの本社でオペレーティング・システム(通称OS)と、ソフトウエア開発キット(通称SDK)の開発に励んでいました。ゲーム開発者が実際にPlaydateのためのゲーム制作するために必要なインフラとなります。
これはPanicのエンジニアによる共同作業で、Shaun InmanはCapsと呼ばれるウェブベースのフォント作成・編集ツールを、Will CosgroveはWindows上で実行、テスト、デバッグするためのPlaydateシミュレーターを、Marc JessomeはファームウェアとOSの基幹部分を担当していましたが、引き続きOSとSDKのほとんどはDave HaydenとDan Messingによるものでした。
「Dan MessingはOSとPlaydateのメインランチャーを含む、あらゆる種類のユーザ向けアプリで素晴らしい仕事をしてくれました。」とGregが語ります。
「確かに、様々なことに取り組みました。」と、Danは言います。「ホーム画面の様なものから設定アプリ、SDKの側面まですべてです。経路探索やコリジョン検出、1ビット画像におけるブラー処理などはコラボレーションの良い例です。最初にブラーとディザを実装した際、Daveがやって来てハードウェア上で高速化するための一連の最適化を行なってくれました。それらの多くは誰もが何らかの形で利用する、触れられるものでした。Daveが画面に画像を表示する方法を考え出した最初の実装から、時間の経過とともに確実に進化してきました。シーズン1のゲームタイトルと連動して成長したと思います。本当にそれらは良いフィードバックの循環でした。Playdate OSの開発中、並行してシーズン1のゲームが開発されていました。加えて『Playdate デベロッパープレビュー』に参加してくれている人たちからのフィードバックにより、SDKの開発に集中することができました。開発者から『こんなことができないか?』と聞かれ、『個々のゲームが独自に実装するのでは無く、SDKとして提供したらいいのでは無いか?』と考えたのです。例えば経路探索アルゴリズムがあります。あるゲームでそれを必要としていて、彼らはLuaで独自の解決策を実装しようとしていました。そこで私は『ならば、C言語で実装してしまおう。』と考えました。経路探索はゲーム開発者が必要とする一般的なものだからです。SDKとして組み込んで、開発者にとってはより速く利用しやくなりました。このような状況はたくさんあったと思います。SDKを開発する際には、そのためのAPI設計を多く行わなければなりません。」
APIとは、アプリケーション・プログラミング・インタフェースの略です。Danが言っていた経路探索アルゴリズムの様に、Playdateに何をするべきか伝えるための標準的なコードを提供します。
「CocoaやApp Kitなど、MacやiOSのSDKに精通していたことも幸いし、PlaydateのAPIは綺麗に設計されていると思います。何が上手く機能し、何が上手く機能しないのか、その背景を知ることができたのは良かったです。私はその反対側にいましたから。」
Daveもまた、最近の出来事ですが、Playdateが使用しているBluetoothチップのSDK開発で、自分たちでSDKを設計する際に何をしてはいけないのかを示す例になったと言います。
「Bluetoothは多頭龍ヒドラの様なものです。」とDaveは言います。「様々なレイヤーやプロトコルがBluetoothにはあります。その上、Playdateで使用したチップは、これまで使用してきた中でも指折りの難しいコードでした。」
もちろん、Daveはそこでも実装の面白さを見出していました。
「面白かったかって?ゼロです。冗談で無く、今までやってきたことの中で最も魂を消耗する仕事でした。SDKの仕事というのは、もう、死ぬほど大変なんですよ..。つまり.. ああ、そうなんです。愚痴をたくさん言いたいところですが、愚痴るのが好きでは無いので。ま、そんな感じです。」
あらら…。ですが、自分たちでSDKを開発する際にPlaydateのゲーム開発者を念頭の置いたのは良かったと思います。ゲーム開発する際、誰にも嫌な思いをさせたくありません。なお、Playdate本体と同様、OSとSDKにも独自の品質管理プロセスが設けられています。
「Ashur CabreraはSDKのQAを担当してくれており、タイムリーにリリースするのに一役買っています。」とGregは言います。「開発者はこのソフトウエアに依存していますので、品質管理はとても重要です。確実に機能しなければなりませんし、アップデートで以前のバージョンやプロジェクトを壊してしまっては大変です。アップデートの度に毎回、確実に動作する必要があります。彼は信じられないような仕事をし、高い信頼性を確立しました。」
すべてのPlaydateは開発用ユニットでもあるため、SDKの信頼性はとても重要です。SDKはまだ限られた人に向けてプレビュー中ですが、最終的にはすべての人に無料で提供されます。
「SDKを使ってもらえる形にし、結果として開発を、ひいては生活を楽にすることができるのはとても意義深いことです。ソフトウエアを使用するすべての人が楽しい時間を過ごせるように、そして使いやすくなる様に、それらはすべて一貫していて、私はその方法を常に考えています。」
一貫性と言えば、すべてのOSは内部的に一貫性のあるインタフェース言語を持っていなければなりません。
システム設定、メニュー、入力フィールド、ボタンなどのデザインは特定のデバイスを思い浮かべる時に最初に出てくる特徴では無いかも知れませんが、この様な基本レベルのデザインは異なるシステムに独自のアイデンティティを与えるだけで無く、ユーザがデバイスの使い方をすぐに理解し、それぞれの操作で何が期待できるのかを知るため、正しく行うことが極めて重要です。
NevenはPlaydate OSをデザインしました。
「いろいろなアイディアを検討しました。」と彼は言います。
ここで再び、反復プロセスの話が登場です!
「早い段階で気づき、強く感じたこととして、これはスマートフォンとは異なる、ということです。」Nevenが続けます。「WiFiネットワークの強度を示す様なステータスバーはありません。私が重視したのはこれがゲームをプレイするためのデバイスであり、次のゲームのプレイの邪魔をしないことでした。しかし邪魔にならないと言っても個性の無い、無味乾燥なものではありません。OSを使ったり設定を変更したり、プレイするゲームを選択したりインストールしたりする必要があります。そこで私は、その部分を楽しいものにしようとしました。ひとつにはクランクがあるので、それをOSのデザインに取り入れ、クランクに語りかけるようにOSを設計しました。
「クランクに語りかける」Tシャツが欲しくなってきました。
「ボタンや触れそうな項目をグリッド状に配置しないようにしています。Playdateにタッチスクリーンは搭載されていないとある程度分かっていても、爬虫類脳はそれに触れたがるものです。そこで私は上下にスクロールするリストを用意しました。メインランチャーですべてのゲームを見つけられますが、ゲームのリストを直線的に上下にスクロールするもので、クランクで操作が可能です。すべてのゲームのランチャーアート(スマホのアイコンの様なもの)は、アニメーションにもできます。ゲームを選択するとアニメーションが流れ、起動するとそれに合わせてサウンドが流れます。理想はゲームの起動時やブラウズ時、それぞれのゲームの個性が現れるようにすることです。Playdateに触っている時間の99%はWiFiのパスワードの設定では無く、そこに費やされて欲しいと思っています。」
またOSの中には、Chromosphere社が制作した素晴らしいアニメーションが含まれています。
「基本的にはPlaydate OSはシンプルです。お使いいただくと分かりますが、主な機能はゲームランチャーです。インストールされているすべてのゲームタイトルが表示され、起動するためのものです。設定アプリでは表示する時計の種類やWiFiの設定などが行えます。これら設定から管理作業をしようとしているのに、おかしなアニメーションで振り回されることが無いようにすることは、私にとって重要です。だからと言って全く味気無いものという訳ではありません。例えば設定アプリを起動すると、小さなアニメーションが表示されます。ランチャーアートからアプリへ移動する際も同様です。これは起動に数ミリ秒かかるため、アニメーションを見せた方が良いと考えたからです。Danはとても上手く表現し、実装してくれました。そう言ったものが個性となり、Playdate独自の雰囲気を醸し出すと思います。」
クランクを使ってゲームをスクロールする際の視覚的なフィードバックと同様に、重要なのが様々な入力に対するユーザへのフィードバックのためのサウンドエフェクトです。PlaydateのインタフェースではSimon Panruckerによるサウンドデザインにより、楽しいクリック音やビープ音に満ちています。さらに彼はCabel Sasserと共にPlaydateのテーマ曲を作曲しました。ぜひフルバージョンを聴いてみてください。
このように、インタフェースデザインは非常に重要です。ですがこれは1ビットのモノクロ液晶、サイドから飛び出す不思議なクランク、活気あふれる黄色の外見など、Playdateの全体的なルック&フィールのひとつに過ぎません。
「たくさんの黄色を見て来ました。」Jessicaは認めます。
「Panicは長い歴史の中で、黄色と紫色と好んできました。」Nevenが言います。「私たちの最も歴史あるアプリのひとつであるTransmitのアイコンでも、これらの色が使われています。私たちはとても気に入っています。その理由として夏らしい楽しい色であり、ちょっと派手な気分にさせてくれるからだと考えています。また他のほとんどの企業がブランディングとして手を出しにくいカラーでもあります。人々は紫色や黄色、オレンジ色よりも赤や青を好むものです。実際にPlaydateのカラーを決めようとした時、一番の決め手はCabelの机の上にファミコンのディスクシステムのディスクがあったことだと思います。」
ファミリーコンピュータ ディスクシステムは、任天堂のファミコンの周辺機器です。日本でのみ発売され、専用のフロッピーディスクが採用されていました。
「鮮やかで温かみのあるイエローが印象的でした。そしてPlaydateと同じくらいの大きさの四角い形をしています。プラスチック製で、彼の机の上に置いてあるのを見て『あぁ、この黄色じゃないとダメだな』と思いました。」
Cabelは「私たちは80年代から90年代初頭にかけての、カラフルでボクシーで、特徴的な見た目のちょっとハズしたエレクトロニクス製品が大好きです。」と語ります。「それらの時代から、iMacをきっかけにより洗練されたものに移行しました。透明なプラスチックが用いられ、クリーンなデザインになりました。段々と洗練されていき、すべてが白の長方形になったり角が丸くて銀色になったりして、今日ではほとんどのものがそんな感じです。最初のスポーツ・ウォークマンを振り返ってみてください。あの黄色いウォークマンはとても良いですよね。ソニーはそういうものを作り出す達人でしたがそういう時代でもあり、私たちが目指したのは楽しくてキュートで、クールで真面目過ぎないものです。iMacにしても間違い無く当初は奇妙で、キャンディパープルのあとダルメシアン犬模様のブルーもありました。花柄のランプの様なiMacもありましたけど、そんなパソコンあり得ないですよね。でもクールでキュートでした。今はもう無くなってしまいました。大好きだったのですが、残念です。」
「他の色も試してみたのですが、やはり明るい黄色に行き着きました。」とNevenは言います。「ゲーム機でも家電製品でも、黄色が定番のものはあまりありません。多色展開していれば、その中に黄色もあるでしょうが、真っ先に準備される色ではありません。だからこそ我々はこの黄色を自分たちのカラーにできると思ったし、黄色の代名詞となる様なものが作れたことを誇りに思い、幸せに感じられると考えたのです。」
箱も黄色です。
「Playdateを受け取ると、クールな黄色の箱に入っています。取っておく価値のあるクールさだと思います。本のサイズと近いので、本棚にも上手く収まります。『Playdateシーズン1』のような形で背表紙に数字を入れたかったのですが、2や3があるとコレクションを強いるようで残酷なので止めました。私たちはこれ以上、生活の中にストレスを与えるようなことはしたくありません。」
本当にそうです。ここまでお読みいただいただけでも、小さなソフトウエア会社にとってどれほど大規模な事業であるかをご理解いただけたでしょう。プロジェクト開始時には20人だったメンバーも、現在はさらに増えています。ここまでPlaydateの開発ストーリーを掘り下げて来ましたが、SARS-COV-2による世界的な新型コロナウイルスパンデミックが、私たちに影響しない訳がありません。
「私たちが最初のハードウエア製品を開発しようとして、気持ちの上でも様々な想定があったのですが…。地球上の誰もがそうだと思いますが、COVID-19によって何が起こるのか全く予見できませんでした。」とCabelは言います。「これまで皆さんが経験してきた通り、また現在も進行形ですが私たちも同じくある日、『うん、これは深刻な事態になってきたな。』という風になりました。私はそれについて何も理解していなかったことを覚えています。『え、お店に買い物に行って何がいけないの?』と。パンデミックがどのように起こるのか、オフィスのメンバーが説明してくれました。振り返ると間抜けな気分です。日を追うごとに事態は少しずつ変わっていき、ある日、『これはもうみんな、オフィスで作業するべきじゃないな。』と、思いました。みんな自分のマシンを持ち帰り、家でのリモート作業に完全に切り替わりました。ご存知の通り良い面も悪い面もあります。プロジェクトの最終盤でリモートワークに切り替えなければならないと言われたら、直感は『ひどいアイディアで、 Playdateは絶対失敗する』というものだったでしょう。ですが私が間違っていました。想像ほど悪い結果にはならなかったからです。私たちはお互いに離れていても一緒に何かを作ることができる、ということを学びました。ですが生産工場では別の問題がありました。」
「マレーシアの私たちの工場は今年の初めに短い期間、恐らく2〜3週間操業を停止していました。」と、Gregが言います。「それよりも我々にとって最大の問題は、マレーシア政府の定めた渡航制限でした。ちょうど増産し始めようとしていたタイミングで、入国に特別な許可が必要になりました。取得できると思っていましたが、それほど簡単ではありませんでした。また2週間の検疫が設けられ、到着後はホテルに隔離されなければなりませんでした。それは私たちの出張をはるかに難しくしました。幸いなことに、私たちの製造コンサルタントであるStevenと、彼の妻のJessicaが勇敢にもこの任務に志願してくれました。非常に助かりました。生産開始時に品質や製造を監視し、順調に進んでいるかどうかを確認するにはそこに誰かが滞在する必要がありました。彼らが直接そこに滞在してくれたおかげで、私たちの製品は大きく変わることができたのです。」
Jessicaは「私たちは海外でびっくりする様な1学期を過ごしました。」と笑います。
実際、彼女とSteven Nはパンデミックの真っ只中、マレーシアに5ヶ月滞在していました。
「入国の承認を得るまでに6ヶ月掛かりました。その6ヶ月の間に、私たちはアメリカやマレーシアの政府関係者に多大なるご協力をいただいて、渡航できる様になりました。14時間のフライトを経て到着したものの、どこで検疫を受けるのか分からず、またその後どこでどの様に隔離生活を行うのか、食事はどうしたら良いのか分かりませんでした。とにかくスーツケースに食料とジンを詰め込み、隔離先のホテルに移動しました。ホテルではスタッフ全員が防護服を着ていて、いくつかのグループに分けられ、小さなグレーの部屋に案内されました。その後ペナンの工場に行くことができたのですが、今度は移動制限措置が取られていました。そのため定期的に警察へ行き、許可を得なければなりませんでした。道路が封鎖されていたため異なる地域が自由に行き来できず、これはベンダーの審査で問題となりました。と言うのもネジを製造するベンダーに行って、工場で品質の確認が行えないからです。そのため、すべてに時間が少しずつ掛かりました。レストランは閉まっていて、食料品店は開いている。利用したいけど許可された特定のエリア内に留まらなければならず、さもなくば警察に止められてしまいます。ちょっとした冒険でした。」
「工場までの往復に45分掛かっていたので、それはかなり疲れました。」と、Steven N。
「1日に8時間から12時間、1日中マスクをした状態で工場で作業していました。その時点でまだワクチンを摂取していなかったので神経質になっていました。当時、アメリカよりも感染率が高かったこともあり、とにかく冒険でしたし、こんなに長く滞在することになるとは想像していませんでした。私たちが現地に行く時は大抵数週間、長くても1ヶ月程度の滞在です。家に帰ってきて荷物を解き、また荷造りして出張の準備をするのですが、今回は5ヶ月間の滞在でした。」
「ほとんどサプライヤー側に行くことができませんでした。別の地区にあり、私たちはその地区に入れなかったのです。PCR検査で陰性でなければ入れず、また様々なことが重なり、行けませんでした。結果として原材料、鉄鋼、塗料、プラスチック樹脂などの調達が伸びてしまいました。『これはちょっと違うな、設計を変えよう。』と反復作業を行って通常は1週間で終わるところ、3週間かかることもありました。電子部品について、すでに世界的な半導体不足を耳にしていると思いますが、これは標準的な世界中に流通している半導体についてです。これはサプライチェーンの1つの側面に過ぎず、現在進行形の課題です。新しいベンダーが毎日の様に納期を延長し、コストを上げようとしています。」
「ただでさえ不確実なプロセスなのに、さらに不確実性が加わってしまったのです。」Gregは言います。「そのため、今年は部品の入手が非常に困難になりました。電子部品は不思議なことにどれも不足しています。ディスプレイやCPUなどのわかりやすい物からUSBを制御する半導体までもがです。どれもこれも現在入手困難で、どれもリードタイムが数ヶ月、時には6ヶ月や9ヶ月に及ぶものまであります。初回生産する2〜3万台分のPlaydateを生産するためのパーツは確保されていますが、これは本当にチャレンジです。厄介なのはそれ以降のPlaydateの生産で、新しい部品が入ってくるのを待たなくてはなりません。何台生産すれば良いのか、明確な数字が分かれば良いのですが、Playdateを欲しいと考えてくださっているお客様がどれくらいいるのか、まだ分かりません。そのため事前に計画を立てるのが難しく、実際にどれくらいの需要があるのかを把握するためにも予約注文は非常に重要なものとなっています。また昨年からの原材料費の高騰により、Playdateの販売価格を上げざるを得ませんでした。いくつかの部品は20〜30%高騰しており、かなりの増加率です。しかし一方で、部品が不足しているからこそ、より早く入手できるチャンスがあります。例えばある部品は3ドルで手に入らなくなりました。ですが4.5ドル払うと入手でき、時には納期も早まります。ですからコストアップ分をカバーすると同時に、部品の納期を早めるためのコストを見越し、余裕を持たせるためにそのような決定をしました。」
そしてこれはPlaydateの予約注文には影響しませんが、2021年7月、再び工場は操業を停止しました。
「7月末まで工場の閉鎖が決定されました。これは100%正しい判断です。」Cabelが言います。「私たちはそこにいるすべての人が安全であることを望んでいます。ワクチンを工場に届けることはできないか?と考えたこともあります。無力感に苛まれています。毎日この製品を生産してくれている人たちに病気になって欲しくないですし、病気の前ではPlaydateには何の価値もありません。私はこの様な状況から遠く離れた場所にいて、彼らを助けることができなくて絶望的な気持ちになります。が、工場はとても働きやすく従業員を大切にしていることを知っています。ですから正しい判断で、みんなの健康に気を配ってくれていると信じています。」
このブログを読んだり書いたりしている私たちのように、工場や製造業から遠く離れていると製造業のほとんどは自動化されておらず、基本的に人間の手で作業されていることを想像するのは難しいかも知れません。Playdateを組み立てているのは顔のないロボットでは無く、S&Oで情熱を持って懸命に働いてくれる人々によってもたらされているのです。
「S&Oはシャープとオンキョーの頭文字を取って名付けられた、合弁会社です。」と、Gregが説明してくれます。「彼らは信じられないほどに親切で、非常に熱心に私たちのプロジェクトを成功させるため、意欲的に取り組んでくれています。」
Jessicaが続けます。「歴史ある工場で、ほとんどの従業員が新卒採用された人々です。ですから深いつながりがあり、家族のような雰囲気があります。私たちには素晴らしいチームがあり、それは人間の努力の賜物です。部品を置いてマシンを操作すると完成品がポンと現れる訳では無いのです。私たちは2016年からこの仕事に取り組んできましたが、工場のオペレーターもこのチャレンジに参加してくれているメンバーで、とても興奮しています。大晦日の夜にみんなでラインを整え、すべてを終えようとしている時、私がみんなに『OK、あと10台!』と叫んだんです。するとみんなは興奮し、拍手してくれました。マレーシアに滞在したおかげで、パーソナルな繋がりができました。検査を担当してくれたLinda、QAのBala、Vanniはオーディオを担当してくれていて、本当にみんな一緒に、素晴らしい連携で作業してくれました。」
Playdateの様な大きくて複雑なプロジェクトで製造上の問題やパンデミックによる遅れに直面すると、自問します。なぜこんなことをしているのか?と。大変なのに、と。
Gregは下を向きません。「私が学んだ最大の教訓は、失敗しても落胆しないと言うことです。なぜなら、失敗はプロセスの一部だからです。このような複雑なものでは特にそうでしょう。それに私たちは初めてこれに取り組んでいるので、開発中は何度も失敗するでしょう。落胆するのは簡単です。私は確かに落胆する日もありましたが、ここまでお読みいただいた通りすべての問題を解決してきました。私は、私たちがそうし続けることを望んでいますし、私たちはそうするだろうと思います。」
信じられないことに、激動のコロナ禍において人々はPlaydateのための素晴らしいゲームを開発し続けています。シーズン1が元々のコンセプトから時間の経過とともに拡大。配信本数が増えたことはとてもクールです。このコンセプトは2010年代にNetflixから登場した「一気見」文化に対応したもので、新しい番組が公開されると同時にすべてのエピソードが1度に公開されると言うものです。
「当時、アレステッド・ディベロップメントなどの新シーズンを1日で全部見てしまう人もいました。多くの人がそうしていて、私もそうでした。」とNeven。
「1日でなくとも2、3日でいくつかのショーを見ていました。そして私たちはこれらについて2日程度話しただけで終わってしまうことに気付きました。文化的良心が蒸発してしまったのです。そこで私たちは何かクールなものが毎週配信されれば、それについて毎週話してくれるような効果が現れるのでは無いかと考えました。ゲームのシーズンを設け、1週間に1タイトルのペースでゲームを配信します。ベースを掴んでもらって、20のゲームを素早くプレイしようとするのではなく。そして他の19本のゲームにもスポットを浴びてもらえます。」
「1度に幾つかのことがあって、このアイディアの様なものになったと思います。」とCabelは言います。「ひとつはオフィスで、NevenとGregが『マッチカットムービークラブ』と呼ばれることを始めました。何の映画を観るのか分からない状態で映画館に集合し、映画を観ます。NevenとGregが良い映画を選んでくれるだろうと信じるしかありません。インターネットの普及により、もはや驚くことは何も無い今日において、非常に珍しい体験です。すべての映画は公開されるたびにその何年も前からコンセプトが共有されていますし、ゲームにおいても同様で、開発の隅から隅まで明らかにされています。私たちは多くの情報を持っています。よって、このマッチカットムービークラブのことを考えると恐らく、これがシーズン制配信のインスピレーションの一部になったんだと思います。」
Gregはこの「週間サプライズゲーム」と言うアイディアのもうひとつのインスピレーションの源について、次の様に語っています。「私たちはインターネットが普及する前のビデオゲームのあり方を考えました。次の週に何が発売されるかなんて知りませんでした。お店に行くと見たこと無いものがたくさん並んでいてびっくりする。私たちが再現したかったのはそう言う無限の驚きの連続です。
「ヒット作で無くても、心に響かないゲームであっても、『おお、今日は新しいゲームが出たんだ!どういうゲームだろう?』と、ワクワクする気持ちはとても良い気分です。ですが人生を歩んでいくうちにそんな気持ちを捉えるのがどんどん難しくなっていっている気がするので、ぜひみんなにその気持ちを感じて欲しいんです。」と、Cabelは語ります。
「当初、我々は1万台程度の販売数だろうと考えていました。」Gregが続けます。「パッと生産し倉庫に入れ、すべて出荷し届いたすべてのPlaydateで同じ日にシーズンを開始し、同じ日にゲームをプレイしてもらう。うまくいくと考えていました。」
「Playdateの開発を進めていくうち、シーズン制による配信は工業製品と互換性が全く無いことが分かってきました。」と、Cabel。「最初の頃はPlaydateをX台生産し、みんなに配ろうと考えていました。そうすればすべての人が同時にゲームを手に入れられます。しかしそれは現実的ではありませんでした。」
「今、需要は1万台を超えているのでは無いかと考えています。」とGregは言います。「あと何人かは分かりませんが、もっともっと増えるかも知れません。そんなにたくさんのPlaydateを同時に製造、出荷することはできませんし、私たちにとって現実的ではありません。そこで全員が同時にシーズンをプレイするモデルでは無く、Playdateの電源を初めて入れた瞬間にシーズンが始まるモデルに変更しました。電源を入れると最初の2タイトルが遊べます。その後毎週2タイトルずつ、12週間に渡ってゲームが配信されます。つまり世界共通のスケジュールでは無く、ユーザそれぞれのスケジュールでシーズンに参加するのです。最終的には誰もが同じ体験をすることになり、同じ順番でゲームを入手することができます。これはより一貫したアプローチであり、後になってPlaydateを入手した人々にとってより楽しいものになると期待しています。」
Playdateはある程度まとめて発送されるので、同じタイミングで入手する方もいらっしゃると思います。シーズン1のゲームを体験するには、お友達と一緒にPlaydateのブッククラブの様なものを作ると良いかも知れません。
「本当にクールなゲームがたくさんあるので、友達と一緒にプレイしたくなるのは当然です。」とGregは言います。「あなたとお友達とで計画して特定の日付まで特定のゲームプレイを我慢し、一緒にプレイしたりZoomでビデオチャットをしながらプレイしたり、もしくは感想を語り合ったりすることは素晴らしいアイディアだと思います。」
「10本のゲームを揃えるのも大変でした。」と、Nevenは笑います。「なので自分たちでゲームを制作し始めつつ、慎重に何人かの人にゲーム制作を持ちかけました。今では逆に、多くの人がPlaydateのためのゲームを開発したいと言ってくれています。」
当初、シーズン1に12本のゲームを収録する予定でしたが、最終的に24本のゲームを収録することになりました!
「資金を提供したゲームの中には素晴らしい、様々なタイプのゲームがたくさんあり、これらを収録しないわけにはいかなくなりました。」と、Playdateのデベロッパーリレーションを担当するArisa Sudangnoiは言います。
「Playdateのコミュニティに初期から参加していた人たちのゲームも収録されています。開発者のひとりであるNick Magnierは初期から開発者コミュニティに参加してくれていました。そこで彼のゲームを見て、かなりPlaydateにフィットしたゲームだと思いました。」
GregはArisaをPlaydateチームに迎え入れることに興奮していました。
「ArisaはValveから転職して来て、デベロッパーリレーションマネージャーを務めてくれています。つまりPlaydateに関するすべてのゲーム開発者とのコミュニケーションを担当しており、開発者が何に取り組んでいるのか、どんな問題を抱えているのかを把握しています。Playdateの様な製品ではシーズンを構成する24本のゲームが価値の大きな部分を占めるので、とても重要です。彼女の仕事は開発者が我々の活動とスケジュールを理解し、確認しているかを把握することです。その他にも保証や返品ポリシーの策定など、様々な業務を担当しています。彼女は素晴らしい仕事にとても助けられています。」
「みんな、コミュニケーションがしやすいです。」とArisaは言います。「アメリカから日本、ドイツまで世界中の人たちが集まり活動していることは、とても素晴らしいことです。私たちはすでに実績のある開発者だけで無く、Playdateのためのゲーム制作に興味を持つ様々なバックグラウンドを持った開発者に参加していただきたいと思っています。」
では、Panicはどの様にしてシーズン1に収録されるゲームの開発者を見つけたのでしょうか?
「すべてのゲームを自分たちで作るのは無理だと分かっていました。」とCabelは言います。「まず最初に考えたのは、ゲームを作れる人を誰か知らないか?でした。そして幸運なことに、Panicの長い歴史の中で多くのゲーマーと出会って来ました。」
ご存知でしたか?Panicの奇妙なオーバーラップのひとつに塊魂と言うゲームのオフィシャルTシャツプロジェクトがあります。数年後、その繋がりは塊魂の生みの親である高橋慶太氏が、Playdateのシーズン1タイトルとして‘Crankin’s Time Travel Adventure’を開発することに直結しました。
「みんなで座って、クールな仕事をしていると思う、またクールな仕事をしてくれそうと感じる開発者をたくさん、メモに書き出していたのを思い出します。」Cabelが続けます。「これは難しいプロセスでした。これまでにハードウエアを作ったことが無い会社から、聞いたことない様なシーズン制なんて言うゲーム配信システムの、見たことない様なクランクを備えたハードウエア用のゲームを提供してもらいたい。予算はそれほど多くありません。それで、『このデバイスのためのゲームを作っていただけますか?』と、開発者にアプローチしなければなりませんでした。幸いなことに、その一連のアイディアに非常に共感してくれる人々がいたことです。クリエイティブな人々やゲーム開発者の方々の素晴らしいところです。しかし私たちが犯したマーケティング上の過ちのひとつは、ビッグネームが先行したことで、『成功している、聞いたことがある様なインディー開発者のグループに、また別のデバイスが登場した』と言う印象を与えてしまったことでしたが、これは私たちが望んでいたことではありませんでした。私のマーケティング脳は、『人々をこのことに興奮させなければ』と常に語りかけます。私たちはビッグネームを使用する必要があり、それによって間違った印象を与えたと思います。ですので、それを修正するために働きました。まだ製品を販売していない状態で多くのことを学ぶことができ、また、多くのことを修正する機会を得ることができました。このようなことができたことに、私はとても感謝しています。おかげで私たちは、『この製品の目標は、すべての人に提供することです。特別な金額を支払わなくても開発キットを手に入れることができ、すべてのユニットが開発ユニットであり、特別なハードウェアを持っていなくてもPlaydateのためのゲームを作ることができます』と、言うことができました。私たちは明らかにオープンでアクセス可能なものを作ろうとしていますが、シーズンにもそれを反映させる必要があります。」
「実際に批判も受けました。決して良い気分では無いのでみんな好きじゃないと思いますが、重要な事柄に起因して起こっているものであり、であれば耳を傾けなければなりません。人々が『これはちょっと…気分が悪いなぁ。』と言うには理由があるからです。2種類の対応があると思います。『ですね、残念です。』と言うか、一歩下がって、『確かにそうですね。おっしゃる通りで、そのご指摘についてあまり考えていませんでした。改善していきます。』と言うかです。私たちは後者を選択し、強化し、より多くの人々や開発者に働きかけました。その結果、プロダクト自体とシーズンタイトルとを大幅に改善することができたと考えています。」
「ゲーム業界にもっと多くの声を届けたい、もっと多様な声を届けたいと言うのが、私の個人的な目標でした。」と、Arisaは言います。「Sweet Babyと一緒に仕事ができたことは本当に素晴らしいことでした。プロジェクトを通してその功績が讃えられ、履歴書に書いてこの業界で他の仕事に就けるような方法の提供が非常に重要だと、彼らは考えています。」
「Sweet Babyはタレント揃いの非常に才能あるゲーム制作者集団です。」と、Cabel。「Playdate用のゲームの開発について話し合い、彼らはそれを実現しました。さらにベテランの開発者と、まだ世に知られていない、出ていないが素晴らしい能力、スキルを持つ経験の少ない開発者を結びつけるという素晴らしい試みを行いました。これはとても難しい壁で、皆さんに知っていただく必要があります。『このゲームに関わりました!』と言えない状況下でのゲームの開発は、非常に困難なのです。Sweet Babyの素晴らしいアイディアは、人々をペアにして経験と新しい体験を組み合わせて提供することです。とても賢いしとてもクールです。そして彼らが『ええ、Playdateのゲームを更に開発するために、いくつかのチームをまとめたいと考えています。』と言い、それを聞いた時は衝撃を覚えました。一緒に仕事ができて本当に良かったです。彼らの作品は私たちにも大きな刺激を与えてくれます。このプラットフォームに期待しています。繰り返しになりますが、幸せのフィードバックのループがここにあり、コラボレーションの最高のシナリオです。」
Sweet Babyによる「Lost Your Marbles」はシーズン1に含まれる24タイトルの素晴らしいゲームのひとつ。ゲームタイトルのリストはPlaydateウェブサイトからご確認いただけます。
シーズン1以外に、PanicはPlaydateデベロッパー・プレビューも継続的に行っています。
「Playdateデベロッパー・プレビューは、2つのことを実現するための手段でした。」と、Cabelが説明します。「 ひとつ目はこれまでこのプラットフォームに触れたことのない新しい開発者にPlaydateを使っていただき、その結果を確認することです。何に戸惑ったか?セットアップするのに苦労した点は?我々のSDKに何を求めますか?とにかく新鮮な意見が集まります。これはある意味、SDKのベータテストの様なもので、同時にハードウエアのベータテストの様なものでもあります。これにより、クランクに問題が無いかどうかを確認することができました。私たちはこの製品を大量に製造し、出荷する予定です。だからこそ本当に良いものであることを確認しなければならならないのです。」
「また、配布できる台数が限られていたため、開発者の関心の高さに反し、現在のプレビュー参加開発者は200〜300人程度です。」と、Arisaが続けます。「将来的にはSDKを広く公開する予定ですが、その前に開発者の皆さんが必要とするサポートや必要なドキュメントを提供できるかどうかを確認したいと考えています。」
「デベロッパー・プレビューでは、一石二鳥の解決策が得られました。石で鳥を解決することはできませんが!それに鳥を殺す話をしたくありません。」と、Cabelは笑いながら話します。「そう、本当に一挙両得でした。最も良かった点として、人々がゼロから非常に短い時間で何かに移行するのを見て、私たちが正しい方向に進んでいることを実感できたことです。」
本当にクールなものを作っている開発者が世界中に沢山いらっしゃいます。シーズン2は?
「シーズン2が実現すれば..」と、Cabelが言います。「すでに机の上にPlaydateをお持ちの方がいらっしゃいます。ですからシーズン1よりも、シーズン2の方がよりシンクロしたものになると言う夢が実現できます。なので、様子を見ながら、実現できるように祈っています。」
「この先、何が起きるのか誰にも分からないでしょう?」と、Steven。
いずれにしても、1ビットの白黒液晶を持つこの小さなデバイスのために、人々が創意工夫を凝らして様々なゲームを開発して来たことに、本当に驚かされます。
「Playdateのすべての特徴が、Playdateのために何かを作りたいという開発者の気持ちを引き寄せるのに非常に役立ったと思います。」と、Cabelは言います。「もしPlaydateにフルカラーの有機ELスクリーンと強力な3Dチップが搭載されていたとしたら、誰かが『そうだ、これでゲームを作ろう』と言い出すまでに非常に長い時間が掛かるでしょう。最近のゲームの方向性とは逆に、少人数でも、素晴らしくて面白い、適度な分量の意味のあるタイトルを作ることができる規模に戻れます。ハードの制約がそれを可能にしているのです。」
「ああ、制約だ!制約は大好きです。」と語るのは、Playdate PulpとCapsというPlaydate用のフォントツールを開発したPanicの開発者であり、Ratcheteerというゲームもシーズン1に含まれているShaun Inmanです。
Shaun「Panicからいくつかのゲームを提案してほしいと頼まれたのですが、クランクのおかげで、ゲーム内でアンロックする能力について、たくさんの面白いアイデアが浮かびました。」
「私たちは、1ビットの白黒画面を持っています。」と、Greg。「1ビットの画面で、グラフィックで人を感動させることなんてできるのか?しかし、人々はそれが1ビットの画面であることを理解し、それに合わせて期待値を調整します。例えば、クールなピクセルアニメーションがとてもスムーズに動いているのを見たときなどです。」
「このスクリーンを選んだことに起因するものが多いと思います。」とStevenは言います。「実際に見てみないとわからないことが多いのですが、特に明るい場所では、非常にシャープな映像が見られます。今日の一般的なディスプレイとは異なり、光を当てれば当てるほど良くなるのです。これは、ゲームデザイナーのような人に、『この制限で何ができるか?』という人工的な制約を与えることができるようなものです。この枠の中でどうやって創造性を発揮するか?と言うことができます。」
「白と黒、400×240ピクセルのPlaydateの画面が大好きです。もう他のデザインはしたくないと思っています。」と、Neven。「色や線の太さなどもあまり気にしないで済むのは、個人的にはとても自由です。ピクセルで何かを描こうとするとき、その手法はひとつしかないと考えるかもしれません。例えば、16×16ピクセルで矢印を描かなければならないとしましょう。あるアーティストが描いた矢印がすべてではありません。20人のアーティストに描いてもらったら、20通りの矢印ができあがります。こんなに小さくてシンプルなものでも、アートにはさまざまな味付けがあります。」
Danが続けます。「創造性を育む制約の多くは、私がゲームで取り組んでいるものです。デバイスの物理的な制約、つまり白と黒の画面、小ささなどです。しかし、ハードウェアに負担をかけないようにするためには、クリエイティブな解決策を講じる必要があります。」
「バッテリーの電力なども考慮しなければなりません。」とMarcが言います。「30分ごとに充電しなくても、何時間もPlaydateで遊べるようにしたいですよね。このような制約があるからこそ、自分の仕事に創造性が生まれ、考えることが楽しくなり、解決すべき興味深い問題が出てくるのだと思います。」
「子供の頃に800億本ものクレヨンが入った巨大な箱を手にしても、ちょっと圧倒されてしまうんですよね。しかし、それがクラシックな8色だけのクレヨンだったとしたら… 」と、Cabel。「それでも人は虹を描くことができ、自分が何をしたいのかがはっきりとわかるようになります。そもそもこのデバイスに魅力を感じている人たちにとっては、与えられるよりも与えられない方が、ある意味では自由なのです。」
PanicはPlaydateをゲームの開発からプレイまで、すべての人が楽しめるものにしたいと考えています。Mark JessomeはPlaydateをより多くの人が利用できる様に多くの取り組みを行っています。
Mark「楽しかったのは、ミラー・アプリケーションの開発です。これはストリーミングやアクセシビリティツールとして、Playdateをコンピュータ上で実行し、画面などをストリーミングするものです。コンピュータ上でボタンを押すと、デバイスにも反映されます。これは非常に楽しく、またユーザビリティの観点からも非常に価値のあるプロジェクトでした。Playdateに興味を持っている人に最高の機会を提供することができます。」
「またPlaydateは開発者用ユニットでもあるので、コードを書かない人にもゲーム開発を開放してはどうでしょうか?Playdate SDKは素晴らしいものですが、例えば私が使えるものではありません(私の開発スキルは、基本的なHTMLやCSS、Stack OverflowからJavaScriptの断片をコピー&ペーストする程度ですから)」
そこで開発者のShaun Inmanは、私のようなプログラマーではない人のために「Playdate Pulp」というウェブベースのアプリケーションを作り始めました。これはAdam LeDeuxの「Bitsy」のような開発環境にヒントを得ています。インタフェースデザインはNevenが担当しました。
「Playdateでは、ゲームを簡単に作れるようにしたいと考えています。ゲーム開発は、ゲームプログラミングの経験が無い人には容易にできません。道具を揃えたり、プログラミングの基本を学んだり、画面にピクセルを表示したり、さまざまな問題を解決する方法や物理学、数学などを学んだりする必要があります。十分な時間と努力があれば、誰でもそれを学ぶことができます。」
自信を持ってくれてありがとう、Neven! でも、私が作りたいと思っている黙示録的なゾンビが蔓延るテキストアドベンチャーには、たくさんの困難が立ちはだかっているようね。
「でも、ゼロの状態から短時間でゲームを作る方法を提供するのは素敵だと思います。」Nevenが続けます。「そして、私はこのゲームにその答えを求めています。ゲームを作ったことがない人でも、伝えたいストーリーやゲームのアイデアがある場合、どうすれば素早くゲームを作ることができるのか?そこで、私たちはPlaydate Pulpというプロダクトを考えました。Pulpは、冒険物語ベースのゲームを作るためのウェブベースの開発環境です。プレイヤーはあなたがデザインした世界を歩き回るキャラクターのようなもので、他のキャラクターに出会ったり、物を見つけたり、拾ったりして、世界を探索し、その物語を進めていきます。」
Arisa「Pulpは、プログラミングを知らない人や、普段ゲーム開発をしない人にも門戸を開いてくれるところがいいですね。複雑なプログラミング言語の知識がなくても、クリエイティブな人たちがクールなゲームを作れるようになるのですから。」
「Pulpは開発できるジャンルが限られているので、Pulpが本来想定していないタイプのゲームはたくさんあります。」と、Neven。「Pulpでは、リアルタイムのシューティングゲームなどは作れません。しかし、村やダンジョン、家などを探検するようなクラシックなゲームは作れます。Pulpは、コードを一行も書かずに使用できるものです。基本的には自分でアートを描き、部屋や環境をレイアウトすることができます。キャラクターを描き、配置して、台詞を書くことができます。これらはすべて、コードを使わずにできます。しかし、少しでもスクリプトコードを学びたいという方のために、PulpはPulp Scriptというものをサポートしています。例えば、キャラクターが剣を持っていれば、最後にドラゴンを倒すことができる、といった具合です。Pulpは、実行するハードウェアの面ではそれほど厳しいものではありません。作業中のゲームは、あなたのアカウントに保存され、私たちのサーバーにあります。なので、別のコンピュータで続きを開発することが可能です。」
「最後まで作り終えたら、Playdate用の実行可能なゲームファイルである.pdxファイルをダウンロードし、USBでPlaydateを接続、.pdxファイルをデバイスに移動させれば、Pulpで作られたゲームをPlaydate上でウェブブラウザを使ってプレイできるようになります。このファイルを友人に送れば、友人のPlaydateでもプレイできます。そういう意味では、コンピュータのウェブブラウザの前でゲームをしている状態から、Playdateでゲームをしている状態へと、数分で移行できるわけです。携帯型ゲーム機でこのようなことができるかどうかはわかりません。しかし、アイデアから絵を描き、台詞を書き、そして自分のPlaydateでゲームをプレイするまで、このように素早くジャンプできることは、とても素晴らしいことです。」
振り返ってみると、Panicは100%カスタムメイドの携帯ゲーム機を作っただけでなく、OSを一から開発して、サードパーティの開発者が数年前から使用しているSDKを開発、さらにウェブベースの開発環境を構築して、誰もが自分のPlaydateゲームを作ることができ、すべてのPlaydateデバイスでも動かすことができると言うのは、とても素晴らしいことだと思います。これだけでも十分だと思いますね。もちろん、それだけではありませんが。
Playdateを保護したり、ファッション性を高めたりするアイテムが求められていることは分かっていました」と、Nevenは言います。「そこで、Playdateを保護するカバーのようなものを考えました。現在のPlaydateは、側面にクランクが付いています。ほとんどの面にボタンが付いていますし、右側の正面や上面、下面にはポートがあります。そのため、完全に包み込むようなケースはうまくいかないと考えました。なので、クランクなどを塞がずに、何らかの保護層を設けることが出来るアイデアを考えていました。そして、ブックジャケットのようなものを考え始めたのです。このPlaydateのカバーの仕組みは、本のようなものを想像してみてください。それを横にして、上から下に閉じる。それをPlaydateの背面にカチッとはめ込みます。Playdateの角にあるネジ穴のようなものに、磁石でカチッとはまります。そして、上から折り返して、本を閉じるように、後ろから前へと閉じます。柔らかくクッション性のあるプラスチック製のカバーが2層になっているので、アイスクリームのサンドイッチのようにも見えます。カバーは紫、Playdateは黄色です。とてもクールな色の組み合わせですよね。カバーは画面とボタンを保護してくれています。鞄の中でぶつかったりしても大丈夫です。また、ハードカバーの小さな本のようにも見えるので、本棚に置くこともできます。」
カバーはとても可愛らしいですね。更にPlaydate Stereo Dockもあります。
「Playdate Stereo Dockは、Playdateの最初の主要なアクセサリーです。」とGreg。「アイデアはTeenage Engineeringからの物で、彼らはこの製品のコンセプト案を送ってきました。それはとてもクールなものでした。Playdateを小さなテレビのように見せているのです。私たちはすぐにこの製品に惚れ込みました。机の上に置く小さな黄色い立方体で、その前面にPlaydateを取り付けることができます。前面がマグネットになっていて、サッと取り付けることができます。」
Jesper「手に持っていなくても、デスクトップに置いて仕事ができるようなものがあってもいいのではないか、と思ったのです。」
Greg「この製品には2つの機能があります。1つは、ドックのようにPlaydateを充電できること、もう1つはステレオスピーカーを内蔵していることです。そこで、とてもクールな音楽をストリーミング再生する特別なアプリを開発しました。Wade Cosgroveは、ステレオドック用のPoolsuiteアプリで素晴らしい仕事をしてくれました。人々はそれを見て多くの喜びを得ることができると思います。」
「Poolsuite FM for Playdateは、Poolsuiteが厳選したプレイリストの音楽プレーヤーです。」と、開発したWade Cosgrove。
Greg「信じられないほどクールな80年代風のラウンジ・ミュージック(所持している音楽ではなく、ストリーミングされる音楽です)が、ステレオ・スピーカーから流れます。」
「また私はペンフリークなので、ペン用のスロットを2つ付けました。」とJasper。「自分のデスクに置くのがとても楽しみです。」
Steven N「これはS&Oの工場で開発されています。」
「彼らはオーディオの分野で長い歴史を持っているので、多くの経験を持っています。」と、Jessicaが加えます。
Steven N「私たちは、複数のデザインコンセプトをかなり長い間検討しましたが、最終的には充電ステーション+スピーカー+ペンホルダーをひとつの場所に置くというコンセプトに落ち着きました。」
「ちょっとしたトリビアですね。ステレオドックは2つのパーツに分かれていました。」と、Cabelが続けます。「スナップオン式のスピーカーとBluetoothスピーカーがあり、それ自体がPlaydate用のドック/バッテリーパックにスナップします。つまり、少し厚めのPlaydateを持ち歩きたいときには、スピーカーをスナップオンすることができるというわけです。そして、机の上にも置けるような非常に厚みのあるPlaydateにしたい場合は、バッテリーパックをはめ込むことができます。今日のデザインを見ると、2つのユニットの間には継ぎ目があります。これは、見た目にも面白いと思ったからです。しかし、現実的には、一度にたくさんのことが起こっていました。Playdate Stereo Dockでは、すべてのパーツを別々に設計することは困難でした。そこで、ある時点で『よし、これを1つのピースにしよう』と言いました。そして、机の上に置いておくだけなので、バッテリーはもう必要ないから外してしまおう、ということになったのです。Playdate Stereo Dockは、Playdateのためのクールな家を提供してくれます。それが私のお気に入りです。机の上に置いておくだけでなく、見た目にも美しいですよね。いい感じの時計もありますし。」
やはりPanicは時計を作っていたんですね!2022年には創業25周年が控えています。
PanicにとってPlaydateへの取組みは狂気の沙汰、ワイルドで刺激的、波乱に満ちた10年でした。そして遂に2021年7月29日、予約注文の受付を開始!絶賛、皆さんからのご注文を受付中です。
GregがPlaydateを待ち望んでいるすべての人が購入できるように、計画を説明します:
「我々の計画は、Playdateを必要とする人の数だけ注文を受けることです。早期に注文を締め切ることはしたくありません。ある人は比較的早くPlaydateを手に入れることができるでしょう。また需要に応じて、数カ月、あるいはそれ以上お待ちいただく場合もあります。もちろん、待ち時間が長すぎるなどの理由があれば、いつでも注文をキャンセルすることができますが、私たちはこのプロセスをできるだけストレスのないものにしたいと考えました。それが最も重要なことでした。」
予約開始日までの数週間、私たちは皆、興奮と極度の緊張が入り混じった気持ちでした。
「この日が来ることは分かっていました。製品の準備は出来ていましたが、精神的には準備が出来ていなかったかもしれませんね。」と語るのはNevenです。
Steven Nも言います。「箱に入れて、誰かに届けられるという段階で最高に満足しています。製品が発送され、需要がどのようなものかを知りたいです。そうすれば、サプライチェーンの計画を立て、適切に数量を増やすことができます。」
「ちょっとした緊張感と興奮がありますが、私は楽観的に考えていますね。というか、興奮しています。いや… わかんない!」と、Dan。
Marc Jessomeは、「ワクワクとドキドキが入り混じっているかな。この2つの違いを見極めるのが難しいね。」
Dakota「早く出荷したい!」
「年齢に関係なく、いろいろな人がこのシステムに触れて、何か楽しい経験をしてもらいたいですね。」とSteven。
「不安ですね。」とGregは言います。「この6年間、私たちがずっと疑問に思っていたのは、Playdateを希望する人は世界に何人いるのかという数字です。この数字は私たちにとって長い間の謎でしたが、私たちが考えていたよりもずっと多いと言うことが分かれば、信じられないほど嬉しいことです。」
「今ホームオフィスで午後11時43分、この作業をしている私にとって、このような話をするのは非常に難しいことです。私はストーリーの結末を知らないし、プロジェクトの途中でこのプロジェクトを分解することは、私にとって物理的に不可能に近いからです。」と嘆くのはCabel。「あまりにも多くのことが内包されています。私の人生と同僚の人生のかなりの部分が… 長い間、Playdateのために一生懸命働いてきたすべての人達に、この経験から少しでも失望した人が出てこないことを願っています。私は楽観的になって、ベストを尽くしたいと思っています。でも、正直ちょっと気持ちが揺らいでいます。もう寝たほうがいいかもしれませんね!数週間後、数ヶ月後に何が起こるかわからないという不安にも関わらず、私は何が起こるか楽しみです。製品を手にした人達がどんな気持ちになるのか、そしてどんなゲームが作られるのか、とても楽しみです。」
Jessicaも「ようやく実現することに興奮しています。人々を幸せにするデバイスに勝るものはないのです。すべての目的は楽しむことなのですから。」と言います。
Dave Haydenも言います。「この先、どうなるのか楽しみです。」
今回の、ポッドキャストのエピソードを記事化する、という試みから生まれた本ポストを最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。今後も引き続き、Playdateの裏話やゲーム開発者へのインタビューなども配信していく予定です。もしこのフォーマットが気に入っていただけたら幸いです。Playdateについての最新の情報については、ぜひTwitterをフォローください。ご意見もお待ちしています!